class: center, middle <img src="steve.jpg" width="300" /> # 謎の学タブ ASCON AT-08 でLinuxを動かす <div style="font-size: 21px;">Shimada Hirofumi,<br /> @shimada@inari.opencocon.org, @shimada@mstdn.maud.io</div> --- # あらためて自己紹介 * 東海道らぐ　名古屋案内人 * OSCなごや　地元企画 * OpenCoconプロジェクト --- # こんなLinuxディストリをひっそりとやっています <img src="lib.jpg" width="600" /> --- # 東海道らぐとFediverse * 2017年ごろ、Mastodonを(たぶん)初めてOSSイベントで展示しました * Mastodonでの東海道らぐ実況から、興味をもってもらった方も多いです * これからも若いエンジニアさんに届く活動をしていきたいです --- class: center, middle # 本題 --- # ことのはじまり * ギガスクール構想により導入されたPC * コロナ禍をきっかけに、一気に進んだ * Windows 系のOSを触った若い方が、これを再利用しているのを模索している --- # そんな中こんなニュースが * <a href="https://www.chunichi.co.jp/article/392487" target="_blank">【独自】不具合の学習端末、全２万９０００台交換へ　名古屋市、順次交換</a> (2021/12/29) * <a href="https://www.chunichi.co.jp/article/345071" target="_blank">【独自】納入自治体、全国で名古屋だけ　リコールのアスコン製学校用端末</a> (2021/10/10) --- class: center, middle # このマシン<strike>間違いなく謎マシンなので</strike>触ってみたい！ --- # 数年後 * ちょくちょく中古市場に回るようになってきた * <a href="https://akiba-pc.watch.impress.co.jp/docs/news/news/1665041.html" target="_blank">10.1インチWindowsタブレットが3,980円、中古品が1,000台も入荷！</a> (2025/2/22) * <a href="https://akiba-pc.watch.impress.co.jp/docs/news/news/1672633.html" target="_blank">10.1インチWindowsタブレットが5,980円、中古Bランク品の期間限定セール</a> (2025/3/26) --- # 3/26、入荷したという話を聞いて * 名古屋・大須のイオシスに走って入手 --- # 2台入手 <img src="ascon1.jpg" width="600" /> --- # ところが、様子がおかしい * 店で何台か触らせてもらったが、１台まったく画面が点かない * 2台買ったうちの１台が、触っているうちに画面が点かなくなり、交換してもらった * 交換機を触らせてもらったが、１台まったく画面が点かない --- # 先に言ってしまうと... * このようなタブレットPCは、俗に<strong>中華タブ</strong>と呼ばれることがある * Windows 8 時代以降、数多くのメーカーから安価・怪しいタブレットPCが出ている * IntelのSoCを搭載しているWindowsタブレットは、Linuxを入れて遊ぶことができる --- # 中華タブレット研究に定評のある(?)東海道らぐ * この界隈は、安価で怪しくてLinuxが動かせるマシンが好きな人が割といる * 数多くのタブレットの動作検証を行ったKapperさん * ドスパラタブの検証に定評のあるぴけぴけさん * zgockさん、島田 などなど --- # こういったマシンを触るときの注意 * <span style="color: red;">不必要にBIOS設定をいじってはいけない</span>。文鎮になる恐れあり。 * Linuxが完全に動かない可能性がある。特にサウンド・タッチパネルは認識しないことが多い。 * もともと故障しやすい。転んでも泣かない。<span style="color: red;">試すのであれば自己責任で</span> --- # ASCON AT-08 * CPU : Intel Celeron N4120 * Memory : 4GB * Storage : 64GB (eMMC) * 10.1 inch * 日本語キーボードつき * Windows 10 * fTPMが引っかかってWindows 11にできないらしい？ * ベースは CHUWI Hi10 X らしい --- # とりあえず触ってみる * トラックパッドがとても使いにくい * キーボードの配列はJPであるが、やや変態配列 * ヘッドフォン端子に電源アダプタを刺し間違えやすい * Windows 10がすごく遅いという感じはしないが... --- # 下半身はこうなっている <img src="ascon2.jpg" width="600" /> --- # 前例を探すと... * <a href="https://sikilog.blogspot.com/2025/03/at-08.html?m=1" target="_blank">ascon(アスコン)　AT-08を買いました。</a>(しきうたさん) * ”20年製造の前期BIOS　21年製造の後期BIOSの2種類の個体が混在しているらしく設定可能項目とLinuxをブートできるかが分かれている模様。” --- # 前例を探すと... * <a href="https://sikilog.blogspot.com/2025/03/at-08.html?m=1" target="_blank">ascon(アスコン)　AT-08を買いました。</a>(しきうたさん) * ”Ubuntu24.04.02 LTS,OpenSUSETumbleweed,Manjaro等試したのですが、GRUBにすらいかずフリーズするため試すどころではありませんでした” --- class: center, middle # 盛り上がってまいりました！！！！！ --- # 前期型と後期型の違い * 外見から見分けることはできない * BIOSの設定画面で判別できる * 島田は前期型、zgockさんは後期型を当てた模様 * どうも前期型のみ、Linuxを動かすのにすごい癖があるらしい --- #BIOS : こんな感じに違う 前期 <img src="20.jpg" width="600" /> 後期 <img src="21.jpg" width="600" /> --- class: center, middle # <strike>年度末で忙しい中</strike> # 突発LinuxInstallBattle --- # 前期型を引いたっぽいので、いろいろテスト * あらかじめBIOS設定で Secure Boot を無効化 * いずれもUSBメモリからインストーラを起動 --- # 前期型を引いたっぽいので、いろいろテスト * × Xubuntu 24.10 * × openSUSE Tumbleweed * × Debian 12 * × Manjaro * 〇 Arch Linux --- # ところで、これらのインストーラのブートローダは？ * × Xubuntu 24.10 -- GRUB2 * × openSUSE Tumbleweed -- GRUB2 * × Debian 12 -- GRUB2 * × Manjaro -- GRUB2 * 〇 Arch Linux -- <span style="color: red;">systemd-boot</span/> --- class: center, middle # おぉっと、systemd-bootだけ動くってどういうこと？ --- # systemd-bootとは * "systemd-boot (旧名 gummiboot。ドイツ語で「ゴムボート」)は、 設定された EFI イメージを実行するシンプルな UEFI ブートマネージャーです。" (ArchWikiより引用) * systemdファミリーのひとつらしい --- # 実際に実行すると出てくる、シンプルな選択画面 <img src="systemd-boot.jpg" width="600" /> --- # なぜこんなことが起こるのか？ * GRUB2は万能なUEFIブートローダで、基本どんなマシンでも動くのだが、稀に例外がある * なんらかの理由でGRUB2が動かない場合、他のブートローダ(refind, systemd-boot等)を使えばいけるケースがある * 私の持っている機材だと GPD Pocket2 がこれに該当する --- # というわけで、インストール手順 * 今回は前期型のAT-08にインストールする手法を紹介 * 後期型についても一部ヒントを紹介しています → 【共通】 --- # まずUEFIブートローダからインストーラを起動 * Arch Linuxのライブイメージを焼いたUSBメモリから起動する * 【共通】起動オプションに nomodeset を追記し、Linuxを起動する * systemd-bootでは、選択画面で e キーを押すとオプションの編集ができる * 画面が回転したままになるが、なんとか頑張る --- # こんな感じに起動した <img src="arch.jpg" width="500" /> --- # あとは * Arch Linuxのインストールマニュアルを読みながらインストールを進める * 途中の手順はばっさり省略 * ただし GRUB2 はインストールせず、systemd-boot を ArchWiki の手順通りにインストール --- # 【共通】本番システムのブートオプション * video=DSI-1:1200x1920 fbcon=rotate:1 --- # systemd-bootは自動設定が無いので * 手動で設定を書く必要がある * /boot/loader/entries/arch.conf はこう書いた <pre> title Arch Linux linux /vmlinuz-linux initrd /intel-ucode.img initrd /initramfs-linux.img options root=UUID=b2142e6c-d215-460e-8087-33f2b94fe93c rw video=DSI-1:1200x1920 fbcon=rotate:1 </pre> ※ options は実際は１行で書く --- # 【共通】Xorgの場合の追加設定 <pre> Section "Monitor" Identifier "DSI-1" Option "rotate" "right" EndSection </pre> --- # しかし、これだけではやはり画面が乱れる <img src="shima.jpg" width="650" /> --- # そういえばzgockさんがこんなことを言っていた <img src="zgock.png" width="500" /> --- # ならば、意図的にスリープ(サスペンド)させて復帰 * そんなことできるのか？ → rtcwake コマンドでできることがわかった <pre> 【共通】 /usr/bin/rtcwake -m mem -s 1 </pre> * サスペンドして、１秒後に復帰させることを意味する * これを起動時に自動実行するよう、systemd に仕掛ける(手順略) --- # ということで、動くようになりました <img src="ascon-xfce.jpg" width="650" /> --- # その他のハードウェア * 無線LAN : ◯ * Bluetooth : 未確認 * カメラ : ◯ * microSDカード : ◯ * サウンド : ✕ * タッチパネル : △　要チューニング --- # TODO * 他のLinuxディストリはどの程度いけるか？ * 他のUEFIブートローダは動くのか？(syslinux, EFISTUB等) * 根本的な修正のためにbug報告をする？ --- # まとめ * アスコン AT-08 (前期型)で Arch Linux を動かすことができた * 前期型は<span style="color:red;"> Linux が動かないのではなく、GRUB2 が動かない</span> * 前期型・後期型ともに起動時に画面が乱れるので、回避策を取る * 上記以外は平凡な中華Winタブではなかろうか * 久々にInstallBattleを楽しめた --- class: center, middle # またつまらぬマシンに # Linuxを入れてしまった # (決め台詞) --- # まとめ * こんな使いにくいタブレットを子供に使わせちゃ駄目やろ <pre> 謝辞：しきうたさん、zgockさん、ノウハウありがとうございますorz </pre>